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近年、幹細胞移植による再生医療は大きな期待を集めていますが、実際には移植した細胞が長く生き残らないことも多く、幹細胞が持つ“分泌因子(セクレトーム)”によって病気が改善している可能性が注目されています。私たちの研究室では、「幹細胞を移植しなくても、体が自分で再生する力を最大限に引き出すCell-free再生医療」の確立を目標にしています。

      私たちは、ヒト歯髄幹細胞が持つ、驚くほど強力な組織修復能力に注目してきました。歯髄幹細胞の再生能力は骨髄、脂肪、臍帯由来の幹細胞より優れています。そして、この再生活性は「歯髄幹細胞の無血清培養上清(SHED-CM)」として集めることができることを発見しました。SHED-CM を脳・脊髄損傷、神経変性疾患、自己免疫疾患など、多様な疾患モデルに静脈投与すると、症状が大きく改善し、動物の生存率まで向上します。さらに、SHED-CM に含まれる治療効果のカギとなる特定の再生因子も、私たちの研究で次々に明らかになってきました。「細胞を使わずに、細胞移植以上の力を引き出す。」私たちは、そんな新しい未来の再生医療のかたちを、本気で実現しようとしています。興味のある学生・共同研究者の皆さま、ぜひ私たちと一緒に未来の医療をつくりましょう。

研究テーマ1:幹細胞培養上清(SHED-CM)を用いたCell-free次世代再生医療技術の開発

SHED-CM(ヒト乳歯由来歯髄幹細胞の無血清培養上清)は、血管再生因子や細胞保護因子、免疫制御因子、抗線維化因子など多彩な因子が絶妙に組み合わさり、驚異的な組織再生能力を示します。その大きな特徴は、損傷部位に集まる炎症性免疫細胞を、抗炎症性 M2 マクロファージや制御性 T 細胞へと導き、組織が自ら修復しやすい“再生ニッチ”をつくり出す点にあります。幹細胞移植で問題となる低生着率や腫瘍形成、免疫拒絶、高額な製造コストといった課題を根本から回避できる SHED-CM は、「細胞を使わない次世代再生医療モダリティ」として大きな期待を集めており、とくに神経疾患や自己免疫疾患などの難治性疾患に対して、これまでにない革新的な治療効果が期待されています。現在、私たちは規制当局からの助言を取り入れながら、安全性と再現性を確保した製造プロセスの確立に向けて開発を着実に進めており、細胞を使わずに細胞以上の治療効果を目指す、新たな未来の再生医療の実現のため邁進しています。

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代表論文

  • Matsubara, K. et al. Secreted Ectodomain of Sialic Acid-Binding Ig-Like Lectin-9 and Monocyte Chemoattractant Protein-1 Promote Recovery after Rat Spinal Cord Injury by Altering Macrophage Polarity. J Neurosci 35, 2452–2464 (2015).  

  • Yamamoto, A., Sakai, K., Matsubara, K., Kano, F. & Ueda, M. Multifaceted neuro-regenerative activities of human dental pulp stem cells for functional recovery after spinal cord injury. Neurosci Res 78, 16–20 (2014).  

  • Yamagata, M. et al. Human Dental Pulp-Derived Stem Cells Protect Against Hypoxic-Ischemic Brain Injury in Neonatal Mice. Stroke 44, 551–554 (2013). 

  • Sakai, K. et al. Human dental pulp-derived stem cells promote locomotor recovery after complete transection of the rat spinal cord by multiple neuro-regenerative mechanisms. J Clin Invest 122, 80–90 (2011). 

研究テーマ2:ケモカインMCP-1と分泌型シアル酸認識レクチンsSiglec-9を用いたCell-free次世代再生医療技術の開発

間葉系幹細胞の無血清培養上清をプロテオーム解析した結果、ケモカイン MCP-1 と分泌型シアル酸認識レクチン sSiglec-9 から構成される新規再生因子を同定しました。この MCP-1/sSiglec-9 を中枢・末梢神経損傷、骨欠損、劇症肝炎などの齧歯類モデルに投与すると、損傷組織の修復が著しく促進され、機能回復も顕著に向上します。MCP-1/sSiglec-9 は損傷部位に集積した炎症性 M1 マクロファージを抗炎症性 M2 マクロファージへと誘導し、M2 マクロファージは血管再生因子や細胞保護因子、免疫制御因子、抗線維化因子など多様なトロフィック因子を産生することで、組織再生に適した治癒促進環境を構築し、内在性の自己再生能力を強力に活性化します。リコンビナントタンパク質 MCP-1/sSiglec-9 を用いた再生医療は、幹細胞移植に伴う低生着率、腫瘍形成や免疫拒絶のリスク、高額な細胞培養コストといった課題を根本的に回避できる「細胞を用いない次世代再生医療モダリティ」として注目されており、とりわけ神経疾患や自己免疫疾患などの難治性領域で、従来にはない革新的な治療効果が期待されています。

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代表論文

  • Ishikawa, J., Kano, F., Ando, Y., Hibi, H. & Yamamoto, A. Monocyte chemoattractant protein-1 and secreted ectodomain of sialic acid-binding Ig-like lectin-9 enhance bone regeneration by inducing M2 macrophages. J Oral Maxillofac Surg Med Pathol. 31, 169–174 (2019). 

  • Ito, T. et al. Secreted Ectodomain of SIGLEC-9 and MCP-1 Synergistically Improve Acute Liver Failure in Rats by Altering Macrophage Polarity. Sci. Rep. 7, 44043 (2017). 

  • Kano, F., Matsubara, K., Ueda, M., Hibi, H. & Yamamoto, A. Secreted Ectodomain of Sialic Acid‐Binding Ig‐Like Lectin‐9 and Monocyte Chemoattractant Protein‐1 Synergistically Regenerate Transected Rat Peripheral Nerves by Altering Macrophage Polarity. Stem Cells 35, 641–653 (2016). 

  • Matsubara, K. et al. Secreted Ectodomain of Sialic Acid-Binding Ig-Like Lectin-9 and Monocyte Chemoattractant Protein-1 Promote Recovery after Rat Spinal Cord Injury by Altering Macrophage Polarity. J Neurosci 35, 2452–2464 (2015). 

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